遼朝の最盛期を築いた皇后 蕭燕燕の一代記「燕雲台 - The Legend of Empress -」

 

「燕雲台 The Legend of Empress」

(原題:燕云台 2020年 全48話)

 

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<ぽいんと>

#遼の時代

#北方民族

#女傑一代記

#朝廷の権力争い

#周辺国との戦い

#ロマンス

#オススメ度:☆☆☆☆☆

 

<あらすじ>

 

蒋胜男の小説『燕云台』が原作。

時代は10世紀なかば(日本は平安時代)。中国大陸では、北方遊牧民族契丹族(チーダンズ)が現在の内モンゴルと東北地方を支配し、遼朝(リャオチャオ)を建国していた。南には西夏(シーシャ)と北宋(ベイソン)があり、遼朝は南下を伺っていた。

 

遼朝の宰相である萧思温(シャオスーウェン)には三人の娘がいた。皇族の耶律(イェリュー)氏へ嫁ぐ后族として、萧(シャオ)氏は筆頭后族であり、皇族の男たちは彼女たちを娶ろうと狙っていた。その一人、耶律喜隐(イェリューシーイン)は萧氏の娘なら誰でもいいとばかりに声をかけていたが、次女の乌骨里(ウーグーリ)は彼に恋をしてしまう。やがて、耶律喜隐とその父は謀反を起こすが未遂で捉えられる。共に捉えられた妹の萧乌骨里を助けるため、皇帝 耶律璟の弟 耶律罨撒葛(イェリューイェンサーグ)に言い寄られていた長女の萧胡辇(シャオフーニァン)は、妹の救出を条件に彼に嫁ぐことに。一方、三女の萧燕燕(シャオイェンイェン)は、大臣の息子で漢族である韩德让(ハンダーラン)と出会い、結婚の約束をする。しかし、先帝の息子で韩德让の友人でもある耶律贤(イェリューシィエン)も彼女を見初めていた。

一方朝廷では、皇帝の耶律璟(イェリュージン)が先帝を暗殺して皇位についていた。彼は非常に残忍で、常に侍衛や侍女を殺し酒漬けの暴君だった。皇帝の暴力を恐れて政治が滞り、社会は腐敗していた。

969年、耶律璟はついに、侍衛によって殺される。先帝の皇子 耶律贤(21歳)はすぐに朝廷を掌握して皇帝 景宗となり、萧燕燕(16歳)を娶る詔を出す。韩德让と引き裂かれた失意の萧燕燕は、やがて男勝りの勇猛果敢な性格で政治と軍事に関与していく…。

 

<みどころ> 〜ネタバレ注意〜

原作を書いた小説家の蒋胜男は、代表作『芈月传』で知られています。これは、孙俪(スン・リー)が主演する「ミーユエ〜王朝を照らす月〜」でテレビドラマ化されました。名前に「男」の字が入っていますが、女性作家です(笑)続いて書かれた「燕云台」(イェンユンタイ)も、ミーユエ」に負けないくらい、たくましい女性の一代記です。

 

ドラマの舞台は草原で、珍しく北方民族が主役です。

一般的に中国ドラマでは、

漢族=文明が進歩、洗練、思慮深い

 vs

北方遊牧民族=文明が遅れている、素朴、野蛮

という描かれ方をしますが、これも同じかんじです。

 

主人公の萧燕燕(シャオイェンイェン)は契丹族(チーダンズ)。男勝りで粗野、言いたいことをすぐ口にして行動に移す、という直情型の性格です。他の契丹族の人々もどちらかというと直情型に描かれています。一方、遼朝の王朝に使える漢族は、思慮深く立ち回ります。

このドラマでは一貫して皇族の権力争いが描かれます。

遼朝の太祖(初代皇帝)には三人の息子がおり、それぞれの子孫が王位を得られる資格がありました。これが災いの種として残り、この3グループの親戚間で王位をめぐる争いがよく起こります。二人の姉は、グループそれぞれに嫁いだため、王位争いに関与することになり、3姉妹の関係がだんだんと複雑になっていきます。

 

また、統治方法についても大変ユニークでした。遼朝では、遊牧民族と漢族が存在するため、それぞれの民族の習慣に適した治世を行っていました。しかし、次第に漢制を朝廷に取り入れていきます。契丹族の伝統的な生活を支持する保守派の反対に遭いながらも、

耶律贤と萧燕燕はともに改革をすすめ、遼の最盛期を築きます。

 

主人公 萧燕燕を演じるのは、「王女未央 – BIOU -」で主役を演じた唐嫣(タン ヤン/ ティファニー・タン)、1983年生まれ、上海出身です。出産後初のドラマ出演です。あんまり粗野なかんじが似合いませんが、相変わらず可愛いですね! 

 

相手役の韩德让を演じるのは、「海上牧雲記〜3つの予言と王朝の謎」で穆如寒江を好演していた窦骁(ドウ・シャオ/ショーン・ドウ)爽やかな笑顔が素敵です。 1988年生まれ、西安市出身です。10歳の時に家族でカナダに移住しています。カナダでは空手を習っていたそうです。俳優になりたくて2008年に中国に戻り、北京电影学院表演系で演技の勉強をしました。

もう一人の相手役は、皇帝景宗となる耶律贤を演じる经超(ジンチャオ)、1986年生まれの上海出身です。「如懿伝〜紫禁城に散る宿命の王妃〜」「白華の姫〜失われた記憶と3つの愛〜」にも出演してましたよ! 両ドラマとも愛が報われない役でしたが、今回はどうでしょう?

他にも豪華キャストが多数出演しています。

萧燕燕の父で宰相の萧思温を演じるのは、刘奕君(リュー・イージュン) 1970年生まれ西安市出身です。(意外と若い?!)「扶揺(フーヤオ)~伝説の皇后~」剣王朝〜乱世に舞う雪〜」では、悪役だったのですが、今回はいいお父さん役なので、ホっとしています(笑)彼は演技派なので、他の人がアテレコでも、彼だけはいつも自声で放送されています。ちなみに、主演俳優を含め、他の方は全てアテレコです(爆)。

萧燕燕の上のお姉さん 萧胡辇には香港の女優 佘诗曼(ユーシーマン/カーメイン・シェー)。1975年生まれなので、撮影時は45歳なんですね、びっくり! 「瓔珞(エイラク)〜紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃〜」では、2番目の皇后役を好演しています。落ち着いた演技が印象的です。

その萧胡辇と結婚する耶律罨撒葛を演じるのは、1972年生まれ青島出身の谭凯(タン・カイ)です。「王女未央 – BIOU -」「マイ・ディア・フレンド〜恋するコンシェルジュ〜」にも出演しています。硬派な演技が光ります。

 

中国の皇后の一代記ドラマは、どれも大変見応えがありますね。日本では清朝西太后が有名ですが、中国ドラマを見て、ほかにも女傑が多数いることがわかります。ちなみに、萧燕燕は「铁血皇后」と呼ばれていました(苦笑)めっちゃ強そう〜!

 

 

<歴史上の事実> 〜ネタバレです〜

脚本は割と歴史に基づいて忠実に描かれています。

主人公の名前ですが、ドラマでは「燕燕」と呼ばれることが多いですが、これは幼名です。一般的には、「萧绰(シャオチュオ)」と表されます。耶律贤の死後は「萧太后(シャオタイホウ)」とよばれていました。

萧燕燕は十六歳で結婚、その当時は、父の萧思温が宰相として権力を握っていました。夫の皇帝 耶律贤(イェリューシィエン)は病弱だったため、政治と軍事を萧燕燕にまかせます。十七歳の時に父の萧思温が刺客に狙われて死亡、その後、皇帝の支持を受け一人で政治を仕切っていきます。

982年、皇帝が即位わずか13年で崩御、34歳の若さでした。息子の圣宗(シェンゾン) 耶律隆绪(イェリューロンシュー)が12歳で即位し、萧燕燕は29歳で皇太后(萧太后)となります。彼女は摂政として27年間政治と軍事の指揮をとり、周辺諸国との争いにも第一線で活躍するのです。

1004年には北宋との戦いが勃発、のちに澶淵の盟と呼ばれる講和が結ばれます。これにより、遼は120年間の平和が訪れるのです。

韩德让(ハンダーラン)は重臣として彼女を支え続けます。そして、耶律贤の死後、二人は再婚します。これはドラマの演出ではなく、史実なんです! 萧燕燕が皇太后の地位を保持しながら再婚するというのは、なんてドラマチックなんでしょう! この点は、漢族の儒教の考えが及ばない、草原のおおらかな気質からくるのでしょうか。

萧燕燕は五十七歳で病死、ほどなく韩德让も死去しますが、息子の圣宗は自ら国葬で彼を送り、萧燕燕の陵墓の側にお墓を立てます。韩德让は皇族 耶律の名前も送られています。遼の皇族の墓地のなかで、唯一、臣下である韩德让が葬られたお墓があるのです。ロマンチックですね!